夜のしじまに。

ひととひと

彼が空へ還った日

ショッキングな出来事が起こりました。
知人がお亡くなりになりました。

 

彼とは数年前に一度ライブハウスで
お会いしたきりでした。

そのときは私もボーカル活動をしていて、
彼も歌う人でした。

 

特に互いの音楽性に惹かれたとか、
そういうわけでもなく、
ただ強い「なにか」を感じる人だなあと私は思って、
なんとなく私は彼に声をかけました。

 

話すと彼は少しオネエ言葉で、
私はびっくりしましたが、
どうも性的な苦悩があるような感じを受け、
その後彼のステージングを見て納得しました。

 

「この人は男女の性差を越えようとしている」

 

一人で力強く歌うその姿は、男らしくもあり。
けれど滲みだす歌声や表現力は女らしくもあり。
それが本当の姿なのか、演出なのか。
そんなことは大きな問題ではなくて、
人として何か深いものを抱えている隙間が見えた瞬間に、
「アーティスト」としての顔が見えました。

 

この頃の私は人と深くかかわりあう事を
極端に避けていたため、
彼とはそれ以来、会う事もなかったけれど、
一度会っただけのそれがすごく強烈で鮮烈で、
忘れられない人としていたから、
またどこかで会えば、
きっと今度は深い話ができるんだろうなとか確信的に信じていた。

 

それは当り前のように彼がこの先もあの姿で歌っていくのだろうと、
疑う事もなく信じていたから。

 

けれど彼はこの地上世界からいなくなってしまったらしい。
私には特別な能力はないから、彼の霊や気を感じたりすることはできない。

 

私の記憶の中で、
なんとなく赤いヴェールに包まれて、
スタンドマイクを抱きしめてシャウトする彼の姿しか、
瞼の裏に思い出すことはできないけれど。

 

ご冥福をお祈りいたします。